ねむりやなぎ

2007年3月3日
たとえばということばすらあなたの中に。

カタン
カタン

硬い音
つめたい床

なにをしているかなんてわからない
あなたはいつもわたしから見えないところにいる。

カタン
カタン

暗闇と灯り
ノイズ

今は午前三時で
電気をつけていないこの部屋は真っ暗で
そのうえ
わたしはひとりきりだ。

ふすまの隙間からこぼれるひかりがたまらなく遠くて切ない。
そんなんならいっそ目なんか見えなきゃいいのにと思ったけれど
でもやっぱりそうしたらあなたが見えないから嫌だ、と思いなおした。

永遠みたいな時間
微かに聞こえる音楽

たとえば立ちあがってそこをあければ
多分すこしだけ驚いた顔をしたあなたがいて
起きたの、なんてたづねながらあたたかいミルクを飲ませてくれるのかもしれない。
あるいは、起こしちゃった、ともうしわけなさそうな顔でほほえむかもしれない。

たとえばこのまま起きていたら
ふとした気まぐれであなたがこちらを覗いて
起きているわたしを見て不思議そうな顔をするのかもしれない。
あるいは、おはよう、としづかな声で言うのかもしれない。

すべて、空想。
現実は、夢の中。

たとえばを連ねた思考の群れに
あなたのたてる硬い音が響いてくる。

なにをしているかなんてわからない。
もしかしたらそこにいるのはあなたじゃあないのかもしれない。
あなたが見えないわたしにそれはわからない。

カタン

続いていた音がやんでひとがうごく気配。

ふすまが開く前に
あなたがここにいるとわかる前に

眠ってしまおう。

たとえば、あなたがあなたじゃあないときのために。

 

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